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倒産メーカーの製品を競合メーカーが自腹で買い取る

メーカーが倒産してごっそり残された在庫の山を一掃するウルトラCがある。それは「競合メーカーに買い取らせること」だ。そんな不条理がなぜ許されるのか。



■スマートフォンシフトが遅れたメーカーの苦難



 「ごろ寝マウス」をはじめとする入力機器や各種ファニチャ製品で知られたシグマA・P・Oシステム販売株式会社が、10月11日に破産を申し立てた。同社に限らず、吸収合併も含めてここ数年で消えていったメーカーは数多く、今後もまだ同様の事態は起こる可能性がある。昨今のPC“アクセサリ”メーカーの競争激化がこの背景にあることは想像に難くない。こうしたメーカーの破産や事業停止の裏でうごめく諸々の事情をのぞいてみたい。



 マウスやキーボード、さらにはサプライ製品を取り扱うPCアクセサリメーカーは、一般的に利益率も高く、ハードウェアのみを取り扱うPC“周辺機器”メーカーに比べると財務状態は良好といわれている。その理由は、ハードウェアと違ってサポートの手間がかからない、そして、自社開発の割合が低いため研究開発費に相当するコストがかからない、といった要因が大きい。実際、PC周辺機器が利益が出るか出ないかギリギリの卸価格を設定しているのに対し、PCアクセサリ製品は、数十パーセントの利益率があることも多い。



 とはいえ、マウスなどは豊富なバリエーションを用意して、その中の1つを選んで買ってもらう販売スタイルが主であることから、単品ごとの回転率はどうしても悪くなる。最近多くのサプライメーカーがスマートフォンのカバーや保護フィルムに参入しているのは、もともと利益率が高いことに加えて、回転率が高いことも大きな理由だ。



 スマートフォン用アクセサリは、スマートフォン本体に適合するように作られるため、その販売が終息するとアクセサリもまったく売れなくなるリスクある。だが、モデルチェンジのたびに後継製品との入れ替え需要が確実に発生するので、メーカーとしては、いったん売場(棚)を確保してしまえば、後は並べる製品をぐるぐると入れ替えていけばいいという、“おいしい商売”となる。もちろん、過剰在庫は禁物だが、在庫、および、返品分を再生せずに廃棄しても、それほど大きなダメージはない。それほど、大きな利益を得られるのがアクセサリの商売なのだ。



 こうした理由で、PCの販売が頭打ちになっている現在、これまでPC向けアクセサリを中心に事業を行なっていたメーカーにとって、スマートフォン用アクセサリが救世主になりつつある。中でも、市場で圧倒的シェアを占め、なおかつ、製品のライフサイクルが長いiPhone用アクセサリに多くのメーカーがこぞって参入しているのも、こうしたビジネスモデルを考えれば当然といえる。



■とどめはロット不良の「四重苦」



 その一方で、スマートフォン用アクセサリへの進出が遅れたPCアクセサリメーカーの業績は、どんどん苦しくなってしまうのは容易に想像できる。最後までPCを中心とした製品展開を行なっていたシグマA・P・Oなど、該当するメーカーは少なくない。



 ただ、それだけでは売り上げが伸びない理由にこそなれ、事業が破綻するほどの“致命傷”にはならない。また、経済事情による原料高といった理由は、競合他社なら基本的に同様であり、そうなる前触れは少なからずある。備えるべき対策をしなかったという話で、クリティカルな要因かといわれるとちょっと違う。事業が破綻したメーカーは、製品のロット不良など、資金繰りに行き詰まる大きなミスが、その発端となることが多い。



 PCアクセサリメーカーに限ったことではないが、製品は、大量に生産すればするほど原価が安くなる。一方で、大量に作れば仕入れ金額は増えるし、倉庫の維持費用もかかる。また、サードパーティと呼ばれる、PC本体の対応、および販売状況に依存する製品なので、PCの販売が終了してしまえばまったく使い道がなくなることも少なくない。よって、多くの場合は可能な限りロットを切り詰め、PC本体がいつ終息してもダメージを最小限に抑えられるようにリスクヘッジをしつつ、生産計画を立てることになる。



 こうした場合において、主力製品に大規模なロット不良が発生すると、想定外のコストが発生し、資金繰りがすぐに悪化する。返送料の負担、交換品の手配はもちろんのこと、エンドユーザー、および販売店への謝罪などマンパワーを必要とするコストまで、金銭的にも人的にも、あらゆる負担がのしかかってくる。たとえ、ロット不良の責任が外注先にあったとしても、当面の費用負担は発注したメーカーにかかってくる。ぎりぎりのところで資金繰りをしているメーカーにとって、これは大きな痛手だ。



 加えて、ロット不良の責任の所在をめぐって裁判などに持ち込まれようものなら、長い裁判期間に渡って支払いが停滞し、それが会社として致命傷になってもおかしくない。代替品が確保できずに競合メーカーの製品を仕入れなくてはならないという屈辱的な事態になった場合(実際そのようなケースはある)も、その分のコストはメーカー側にのしかかってくる。



 もう1つ、無視できないのがリードタイムだ。PCのアクセサリの多くは台湾などで生産されており、発注してから入庫までのリードタイムが2~3カ月かかることが多く、代替品の手配に多大な時間を要してしまう。これが季節商品であれば、代替品が入庫してきたころにはすっかりシーズンが過ぎていることも考えられる。こうして、本来あるはずだった売り上げが立たず、逆に製品の回収に必要なコストが発生し、交換品を手配するコスト(急いで手配する必要から、船便ではなくコストのかかる航空便を使う)も負担しなくてはならず、さらにその交換品が入荷してきたときにはオフシーズンで滞留在庫になる可能性まであるという、三重苦ならぬ四重苦に陥る。



 シグマA・P・Oは、季節商品であるUSB扇風機のロット不良が2011年の夏に起きている。上に述べたような事態のどこまでが該当したのかは不明だが、大手の家電量販店でも軒並み展開していた定番の製品であり、タイミングからして少なからぬ影響を与えたことは容易に想像がつく。



■破産したメーカーの製品を、自腹を切って買い取る競合メーカー



 シグマA・P・Oが破産する1カ月ほど前から、店頭から在庫商品が撤収するという動きがあり、実際に破産が発表された時点で、店頭に残っている製品はほとんど存在しなかった。まれに店頭でわずかに残った在庫が特価処分されている例も見られたが、会社そのものがなくなるという展開にもかかわらず、店側への影響は最小限に抑えられたといえる。



 もっとも、これはかなりマシな例で、かつて、JustyブランドでDOS/Vアクセサリを展開していたトライコーポレーションというメーカーが約10年前に自己破産したときは、店頭に大量の在庫が残されるという事態が発生した。販売店は独自に値引きをすることで、これらの製品を売り切ってしまおうとしたが、いかんせん量が多すぎた。なにより、IDEケーブルやハードディスク取付用のマウント金具といった消耗品ではない製品だったことから、値引きをしたからといって爆発的に売れるわけではない。その後、数年にわたって処分を強いられたショップも少なくなかった。



 このように、事業を停止したり、あるいは何らかの事情で取引が打ち切られたりして、店頭に山のような在庫品が残されてしまった場合、販売店は、これらの在庫をゼロにするウルトラCのワザがある。それは「競合メーカーに在庫品を買い取らせる」ことだ。このとき、販売店は「破産メーカーの店頭在庫を全部買い取ってくれれば、御社の製品を同額相当だけ仕入れて、買い取って空いた棚に並べてあげますよ」と、競合メーカーに話を持ちかける。



 競合メーカーにとって、破産したメーカーの在庫品を放置しておけば、店頭から一掃されるまでの数カ月から数年間、新規に製品を納入できなくなる危険がある。実際に、在庫過剰気味だったトライコーポレーションの在庫が大量に残ったとき、多くの販売店で同様の事例が発生した。ここで、在庫を自腹で買い取ったとして、一時的に数十万円から数百万円という出費を強いられるとしても、空いたスペースに自社製品を並べられることが保証されていれば、メーカーとしては十分にオイシイ話というわけだ。回転率がそこそこ高い量販店であれば、なおさらだ。



 なにより、“退却”したメーカーがこれまでいたおかげで参入が難しかった販売店に切り込む、またとないチャンスだ。ここで販売店の要求を断れば、別のメーカーがその話に乗って、店頭シェアを一気に塗り替えられてしまう危険性だってある。こうして、破産したメーカーの製品をなぜか競合メーカーが自腹で買い取るという、奇妙な取引が成立する。現実には、あくまでも協賛金や補填という形で行われるので、買い取られた在庫はまるまる破棄されるか、そのメーカーの中で“消費”されるのが一般的だ。



 もし、こうした動きを取ろうとせず、破産したメーカーの在庫を自社裁量で値引きをしつつ売り切ろうとしている販売店があれば、競合メーカーに対する交渉テクニックを持ち合わせていないか、あるいは製品の回転率があまり高くないがゆえにメーカーがこうした話に乗って来なかったか、ただの無知か、ということになる。いずれにせよ倒産メーカーの割を食うのはユーザーでもなければ販売店でもなく、実は競合メーカーだったりするのだ。

2011年11月24日 ITメディア

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